『濹東綺譚』 永井荷風
  木村荘八 肉筆画入り

書 名 : 『濹東奇譚』
著 者 : 永井荷風
装 丁 : 永井荷風
挿 絵 : 木村荘八 34葉
発 行 : 昭和12年8月10日
版 数 : 初版
発行所 : 岩波書店
頁 数 : 193
判 型 : 菊版
外 装 : パラフィン紙、函

解 説 :
永井荷風の名作「濹東奇譚」元版本。
角背厚紙表紙洋装本で、本冊・函ともに白色紙で装われている。
そのため日焼け・変色・ヨゴレたものが多く、保存状態の良い初版完本は少ない。
所蔵の本書は、挿絵を添えた日本画家・木村荘八の、肉筆画が表見返しに描かれている、大変に珍しい一冊である。

保存用帙 アトリエ・サバト館 製作

『潤一郎自筆本 蘆刈』
(出版案内パンフレット共) 谷崎潤一郎

書 名 : 『潤一郎自筆本 蘆刈』(出版案内パンフレット共)
著 者 : 谷崎潤一郎
装 丁 : 谷崎潤一郎
挿 絵 : 北野恒富
発 行 : 昭和8年4月15日
版 数 : 限定500部の内473号
発行所 : 創元社
頁 数 : 246
判 型 : 四六版 横型
外 装 : 桐板挟み帙、送り函、古代揉み紙表紙、本文雁皮紙、袋綴じ絵草紙仕立て、極薄様雁皮典具帖題箋

解 説 :
明治後期から大正時代にかけて、悪魔主義と称された谷崎潤一郎が、古典・純文学・日本回帰に向かう昭和初期の名作「芦刈」の超豪華限定版。
「お願い」の紙が添えられており、外箱は発送用のため廃棄してくれと記されており、外箱の無いものも少なくない。
そのため、それらは経年変化や保存状態の違いでコンディションの良くないものが多く見られる。
出版案内からも、作者自身の本書への深い思いが垣間見え、谷崎潤一郎が情熱をそそいで作られた、珠玉の一冊である。

『ふところ日記』(異装本共)  川上眉山

書 名 : 『ふところ日記』
著 者 : 川上眉山
装 丁 : 一條成美
口 絵 : 一條成美
発 行 : 明治34年9月15日
版 数 : 初版
発行所 : 新聲社
頁 数 : 87(別に附録「其日」27、出版案内8)
判 型 : 四六版変型
外 装 : カバー、紙表紙仮綴じ本

解 説 :
尾崎紅葉、山田美妙らとともに硯友社を創設、明治時代に活躍をした川上眉山の、代表的作品。
新年に、二葉亭四迷との時間から始まる、一人旅を描いた抒情叙事の名作である。
後に生活への不安から自害する、眉山ならではの繊細な情景を、美しい文章で綴った一級の作品。
写真に掲載されている上下を切り取った同書は、当時の持ち主が、更に小さくして懐に入れて大切にしていたことが伺える郷愁深い一冊で、どちらも私の愛玩の書である。

書 名 : 『ふところ日記』(異装本)
著 者 : 川上眉山
装 丁 : 不詳
発 行 : 明治41年6月11日
版 数 : 五版
発行所 : 文禄堂書店
頁 数 : 86
判 型 : 四六版変型
外 装 : カバー、紙表紙仮綴じ本

解 説 :
初版とは別の出版社が、左記初版本の判型を譲り受けた異装本。附録小説「其日」は収録されていない。
奇しくも、この5版が出版された4日後の6月15日に、川上眉山は自宅二階で、妻子を残し自害した。

書 名 : 『ふところ日記』(異装本)
著 者 : 川上眉山
装 丁 : 不詳
発 行 : 明治41年6月11日
版 数 : 五版
発行所 : 文禄堂書店
頁 数 : 86
判 型 : 四六版変型
外 装 : カバー、紙表紙仮綴じ本

解 説 :
初版とは別の出版社が、上記初版本の判型を譲り受けた異装本。附録小説「其日」は収録されていない。
奇しくも、この5版が出版された4日後の6月15日に、川上眉山は自宅二階で、妻子を残し自害した。

保存用帙 アトリエ・サバト館 製作

『寶の山』(少年文学第六編)  川上眉山

書 名 : 『寶の山』(少年文学第六編)
著 者 : 川上眉山
装 丁 : 多色刷り木版画装丁、四ツ目綴じ和本仕立て
挿 絵 : 不詳
発 行 : 明治41年9月30日
版 数 : 11版
発行所 : 博文館
頁 数 : 146
判 型 : 四六版
外 装 : 袋付き

解 説 :
尾崎紅葉、山田美妙らとともに硯友社を創設、明治時代に活躍をした川上眉山の、少年向け作品。
この版が出版された3か月前に、眉山は自宅2階で剃刀を持って自害した。
その後初の重版ということで、袋には「故川上眉山」と記されており、追悼を込めた貴重な一冊である。

保存用帙 アトリエ・サバト館 製作

『濤聲』(異装本共) 国木田独歩

書 名 : 『濤聲』
著 者 : 国木田独歩
装 丁 : 小杉未醒
口 絵 : 小杉未醒
発 行 : 明治40年5月15日
版 数 : 初版
発行所 : 彩雲閣
頁 数 : 272
判 型 : 菊版
外 装 : カバー、硬表紙クロス装、洋装本

解 説 :
「武蔵野」「牛肉と馬鈴薯」などの作品で、ロマン主義作家としてデビュー。
そののち自然主義文学作品を多く発表するが、才能発想が早すぎたがゆえに、尾崎紅葉・幸田露伴が紅露時代と呼ばれるブームの陰に埋もれてしまった、早熟の天才・国木田独歩の作品集『濤聲』初版・カバー付き完本。
この翌年の明治41年6月23日に、36歳という若さで病没。
私は、行く末に悩み、富山で暮らしていた30歳前に、この国木田独歩の「独歩吟」ほか多くの作品に救われた。愛玩・座右の書のひとつである。

書 名 : 『濤聲』(異装本)
著 者 : 国木田独歩
装 丁 : 小杉未醒
口 絵 : 小杉未醒
発 行 : 大正元年8月20日
版 数 : 六版
発行所 : 杉本梁江堂
頁 数 : 272
判 型 : 菊版
外 装 : カバー、紙表紙フランス装、仮綴じ本

解 説 :
独歩没後に刊行された、左記初版本とは版元・造本ともに変わる異装本。

書 名 : 『濤聲』(異装本)
著 者 : 国木田独歩
装 丁 : 小杉未醒
口 絵 : 小杉未醒
発 行 : 大正元年8月20日
版 数 : 六版
発行所 : 杉本梁江堂
頁 数 : 272
判 型 : 菊版
外 装 : カバー、紙表紙フランス装、仮綴じ本

解 説 :
独歩没後に刊行された、上記初版本とは版元・造本ともに変わる異装本。

保存用帙 アトリエ・サバト館 製作

『わびずみの記』墨書署名入り(巻頭遊び紙) 吉井勇

書 名 : 『わびずみの記』墨書署名入り(巻頭遊び紙)
著 者 : 吉井勇
発 行 : 昭和11年3月15日
版 数 : 著者自署本 限定350部の内13番本
発行所 : 政経書院
頁 数 : 311
判 型 : 四六版
外 装 : 杉皮表紙にタイトル焼き印、三椏紙カバー、杉材スライス貼り函にタイトル焼き印

解 説 :
歌人・吉井勇の随筆集。
俗に(ゲテモノ装)と呼ばれる造本に属する。
本物の杉板や木のスライスなどを装丁に用いており、完成までに大変な手間がかかったことが想像される。
巻頭に著者の墨筆による署名がある、贅沢な工芸書である。
好き嫌いはあるであろうが、私にとっては好みの一冊と言えるだろう。

保存用帙 アトリエ・サバト館 製作

『露伴叢書』 幸田露伴 

『即興詩人』 森鴎外

『額の男』 長谷川如是閑

『奴の小万』 ちぬの浦浪六