古来より洋の東西を問わず、多くの画家たちは、女性を女神、あるいは娼婦に見立て、自らの理想とする美を惜しみなく注いで表現し続けた。浮世絵の美人画も同様で、その美しさはあのゴッホやモネをも虜にするほどであった。
長谷川可奈の木版画は、細く流麗な線とビビットな色彩で摺られ、まるでイラストレーションのようだが、実は伝統的な浮世絵版画を強く意識した作品である。このことは線刻などの技術的な側面からだけではなく、現代風俗の描写や、裸体の明け透けな性表現が春画を連想させることなどからもわかる。
無防備な肢体に表れたのは、あるがままに存在することを望む女性の意志である。理想から抜け出し、自らの足で立ち上がった彼女たちの姿こそ、当世風の美人画にふさわしいといえるだろう。
(『版画芸術』2013年秋号「フォーカスアイ」より)